大腸の粘液癌に関して、情報は少ない。
特に、日本語での情報は少ない。
例えばGoogleで、「大腸 粘液がん」と検索して、最初に目につく情報として使えるものは、”大腸粘液癌の検討”という論文くらい。
この論文は1982年発行とかなり昔の情報であるため、今となってはそんなに有用度の高い情報とは言いづらい。
そして何よりもなかなか絶望的なことが記載されている。
なので僕はGoogle Scholarという論文検索で調べることにした。
「大腸 粘液癌」や「mucinous colon cancer」と入力すると、大量に論文(情報)がでてくる。
僕として、情報のインプットに役立ったのは英語の論文だ。日本を含め全世界の研究が集約されているという点で、最新の症例や研究に多く触れることができた(もちろん100%理解できてるわけではないけど)。
世界的に見ても患者数が少ないこのがん、当然日本だけに絞ってしまうと統計的な研究ができるほど症例数が多くないのだろう。
大したことは書いてないですが、Google Scholarで見つけた論文の読み方のコツに関してはこちらをご覧ください。
ちなみに各論文はあくまで一研究による結果なので、その研究結果が全ての答えというわけではない。
結局は複数の論文を読んで自分なりに答えを整理していく必要がある。
さて、粘液癌について検索して、僕のブログにたどり着く人もいるだろうから、最初に僕なりに着地したポジティブな結論を書こうと思う。
当時(2017年)読んで理解していた内容と、今の状況は違うかもしれないけど(きっともっと良くなっている!)、
“粘液癌だからといって予後が悪いとは限らない。”
これが当時の僕が行き着いた結論。
素人なので理解が違うところもあるかもしれないし、僕の解釈のさじ加減ということもあるだろうけど、僕はそう考えることができた。
ここからは順を追って、粘液癌について記載していく。
まず粘液癌の特徴として、次のようなものがある。
粘液癌は、
- 世界の大腸がんの中の3.9% – 19% の割合で存在する(国によってまばらなのでレンジが広いみたいだ)
- 日本の大腸がんの中だと 2.7% – 6.9% (日本だと特に稀)
- 上行結腸にできやすい
- がんのサイズが通常の腺腫よりも大きいことが多い
- がんが進行している患者が比較的多い
- 抗がん剤が比較的効きづらい
- MSI陽性(MSI-H)が比較的多い
※MSI陽性とは、もともとがん細胞は正常な細胞のバグでできたモノだけど、そのバグが通常よりも激しいモノ。(誤解をおそれず言えば)
といったところだ。
そして僕の理解だと、粘液癌=予後の悪い、と必ずしもならない。
まず、そもそも研究結果の中には粘液癌という要素だけが、普通の大腸がんと比較して生存率が低いという統計的な優位性は見られない、というものが見られる。(同じく、粘液癌は予後が悪いという統計的優位のある研究もあるのでどっちが正しいかというのはわからないが、結論は出ていない。)
そして、粘液癌は、なぜか上行結腸にできることが多い。(僕もそうだったように。)
上行結腸にできるということは症状が出づらくて、がんの発見が遅れ、結果そこそこな進行がんとなってから発見されることが多い。
なので、通常のがんよりも予後が悪く見える。
(もちろん大部分の研究の中では腺腫と粘液癌を、同じステージで比較しているのだけど、同じステージ間でも進達度や大きさなどに細かな差異があるはずだ、と考える。)
さらにいえば、MSI陽性の大腸がん(粘液癌含)は、普通の大腸がんに使用される抗がん剤が効きづらいのだが、最近出て来た免疫チェックポイント阻害薬に高い効果が見られるという良いニュースもある。
このニュースにもあるように、日本でもMSI-Hの大腸がんに免疫チェックポイント阻害薬が適用されつつあるのである。
つまり粘液癌の予後が悪いとされていたのは、そもそも上行結腸に発見がしづらく発見されるときにはそこそこ進行しているということ、従来の抗がん剤が効きづらいことの2点に集約される(と考えている)。

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