XELOX、嫌な感覚!

手術後、たしか8週間以内に術後化学療法をはじめないといけなかったと記憶している。

僕の場合、合併症やら再入院やらで8週間ぎりぎりでの化学療法のスタートとなった。

化学療法を受ける前に、本日の僕の状態が万全か、必ず血液検査とH医師による診断が入る。

血液検査をし、1時間ほど経過しただろうか、受付で最初にもらったPHSに、H医師からの呼び出しベルがなった。

僕はH医師にXELOXを受けることを伝えた。

XELOXは、3週間に1回病院にきて、点滴を行い、その後2週間毎日2回飲み薬を飲み、最後の1週間は何もないお休み期間となりそれを8クール続ける。

なのですべての治療が終わるのは、3週間 x 8クールで24週間、つまり6ヶ月の長丁場の治療となる。

これからはじめる僕にとっては非常に長い道のりに思えた。

H医師からは、化学療法の枠が準備できるまで院内で待機するように言われ、1 時間ほどで化学療法の部屋に呼ばれた。

ちなみに、診察後1時間後に呼ばれるのは良い方で、日によっては2時間くらい待たされたこともあった。

化学療法の部屋の前には、消毒液が置いてあり、必ず入室前に手を消毒しないといけない。

化学療法を受けている患者さんは免疫が落ちているため、病気に感染しやすいのだ。

その日、部屋に入ると、看護師さんたちがせわしく動き回っていて、受付には誰もいなかった。

僕は受付の奥で何やら作業している看護師さんに声をかけたが、「ちょっと待っててください。」といわれてしばらくの間、受付のソファーで放置されていた。

それくらいみなさんフル稼働して、患者さんの対応に当たっていた。

20分くらい経っただろうか、一人の看護師さんが僕に声をかけてくれ、化学療法にあたっての注意事項などの説明をしてくれた。

渡された書類に一通りサインすると、受付の真正面にあるカーテンをめくり、化学療法の治療スペースに案内された。

飛行機のビジネスクラスのようなリクライニングシートとテレビが、網目のように張り巡らされ設置してある。

意外だったのは、治療を受けている患者さんは非常にリラックスしていて、おのおのテレビや携帯を見てくつろいでいるように見えることだった。

さて、今回の点滴のメインはオキサリプラチンというお薬なのだが、点滴は2段階に分かれている。

最初の30分は、吐き気予防の点滴を打たれる、これが30分くらい。それからメインのオキサリプラチンを2時間程度受けるのだ。

最後に生食液でチューブに残ったオキサリプラチンを身体の中に流し込み終了だ。

僕が「ある意味で」ラッキーだったなと思ったのは、CVポートが鎖骨部分に埋めてあったことだ。

これにより、化学療法の点滴がスムーズだった。

というのも、オキサリプラチンは血管痛が結構ひどくでることがあるらしい。普段使用する腕の血管だと、血管が細くて痛みが出やすいとのことだ。

治療室には腕に毛布や湯たんぽを当てている患者さんがちらほらいたのだけど、これは血管痛を和らげるための処置らしい。

CVポートを入れている僕は、心臓近くのぶっとい血管に管が入っているためその痛みが出ないというわけ。

術後化学療法を受けるのに、CVポートをしている患者はレアである。なぜ僕がCVポートをしているか、はこちらをご覧ください。

さて、リクライニングシートの裏にある荷物入れにバッグを入れ、看護師さんがきびきびと点滴の準備をしてくれた。

吐き気止めの点滴が滞りなく行われ、ついにオキサリプラチンが注入される番がきた。

僕は少し緊張した。

「それではいれますよー。」看護師さんの声とともに、点滴が始まった。

少し冷たい感覚を鎖骨の下で感じる。

痛みはといったものは全くない。ただ冷たい液体が、体に流しこまれている感覚はある。

そして、武者震いのように体の中かがぶるぶるっと震える、感覚が襲ってきた。

実際に体は震えてはいないのだけど、体全身が身震いするような感覚。

この感覚、最初だけではなく、これから毎回オキサリプラチンを注入されるたびにやってきた。

最初だけではなく、点滴をうけている間、何回か襲ってくる、いやーな感じ。

身体拒否反応を示している、そんな感じ。

化学療法の時間を過ごすための道具を準備してきていなかった僕は、オキサリプラチンの嫌な感覚を時折全身で感じながらも、うとうと寝てしまった。

気付いたら、点滴は終わっていた。

ロビーでは、兄が車で迎えにきてくれた。病院に来たのが12時くらいなのだが、外はもうすっかり暗くなっていた。

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化学療法の医師

 1月の中旬になり、僕は再び病院へ外来で訪れた。

化学療法の医師と初めてご対面するのだ。

事前に調べた情報だと、その医師はこの病院の「消化器内科の医師」というだけで何かしらのタイトルがあるわけではなかった。

文句があるわけではないが、主治医であるO医師も、手術で担当してくれた麻酔技師も歴戦の勇士だったので、気にはなった。

結果的には、化学療法の医師もすごくいい医師だった。

 

 入院患者としてではなく訪れた病院はどこか新鮮で、だけど懐かしさを感じさせた。

特に玄関をくぐる際、僕はセカンドオピニオンで初めてこの病院を訪れたことを思い出した。

そう、ここから始まったんだ。そういう感覚。

入院していた頃とは違い、慣れない外来の受付をしないといけない。

受付を機械で済ませ、呼び出し用のベルを受けとる。次に、どうやら採血に行かないといけないらしい。ちなみにこれから外来に訪れるたびにまずは採血、というのがルーティンとなる。

注射は嫌いだ。だけど、入院中毎日注射を打たれていたので、もう慣れっこである。採血くらいであれば序の口。インフルエンザ予防のような筋肉注射ですらそこまで怖くはない。

採血後、程なく呼び出しのベルがけたたましくなった。

化学療法の医師からの呼び出しだ。

以前O医師からセカンドオピニオンを受けた時の向かい側の部屋に案内された。

ノックをして部屋開けると、そこには眼鏡をかけた30代半ばくらいの青年がいた。

おじさんというのには少し若すぎるが、若年というわけでもない。同い年か少し先輩かな、という感じ。

あまり目を合わせて人と話すタイプではないのは、最初の二言三言ですぐにわかった。

しかし、話し方が丁寧で内容も非常に分かりやすい医師だった。この医師H医師としよう。

この日僕はこのH医師から、術後化学療法に関しての基本的な説明を受けた。

その中で最も衝撃的だったのが、大腸がんで使われる抗がん剤は、髪の毛が抜けない、ということだった。

僕は思わず聞き返してしまった。

実は、抗がん剤=髪の毛が抜けるは世間に定着した一つのイメージで、すべての抗がん剤に当てはまるわけではない。

これは意外とみんな勘違いしているように思う、

私の友人はもう先回りして、髪の毛がなくなった時ように、帽子を購入していてくれていたくらいだ。

僕自身、事前に化学療法に関して予習してきたはずだったのだが、思い込みの力が勝っていたみたいだ。

さて、化学療法によって僕が少しだけ不安になっていた要素が、大腸癌の代表的な抗がん剤の副作用の一つである末端神経症。

大腸がん術後補助化学療法だと、僕のいた病院だと二つの選択肢があった。

一つはFOLFOX(フォルフォックス)、もう一つはXELOX (ゼロックス)というもの。

どうやら使用する複数の薬名の頭の文字をとり組み合わせ、こういったアルファベットの名前になっているらしい。

この2つはお薬の組み合わせが違う。しかし共通している薬が1つある、それが両方の名前の後ろに入っているOXというお薬。両方の治療のベースとなる薬だ。

これはOxaliplatin(オキサリプラチン)という名前の薬剤、そしてこの薬剤に共通している副作用の一つに「末端神経症」というものがある。

以前もコラムに書いたが、末端神経症には症状が二つあって、

一つめは、冷たいものに手足が触れると痺れを感じる急性のもの、それから手足の先が常にジンジンと痺れている感覚を覚える慢性のものだ。

H医師からこの末端神経症に関して説明を受けたのだが、

どうやら指先の繊細な感覚をお仕事にしているような職人さんや、楽器奏者のかたのなかには、この慢性的な痺れを嫌い、化学療法をしない、もしくは他の薬剤を使用するという選択をするらしい。

なぜなら、この慢性の痺れ、いつ治るのか誰にもわからないらしい。万が一長い期間痺れを感じる場合、職業によっては復帰することが難しいということ、なのだ。

僕の職業にはまったく関係のない話ではあったが、手足の痺れが残るっていうのはすごくいやだった。

FOLFOXか、XELOXか。選ぶのは患者自身。

どちらも ”術後化学療法においては” 効果効能は変わらないので、あとは患者のライフスタイルに合わせて選んでね、という病院のスタンス。

僕は事前に調べた情報をもとにFOLFOXにしようと思っていた。というのも、FOLFOXのほうが1回におけるオキサリプラチンの投与量が少なかったからだ。

投与量が少ないということは、末端神経症が残る確率も低くなるだろうと考えた。でもそれは間違いだった。

H医師の話によると、

FOLFOXは1回のオキサリプラチンの投与量こそ少ないが、XELOXよりも投与回数が多いので全体量はほぼ変わらないのである。

FOLFOXとXELOXどちらも、6ヶ月間の治療となるのだが、XELOXは3週間に1度の投与に対し、FOLFOXは2週間に1度の投与。

しかもFOLFOXは病院での薬の点滴投与終了後、約46時間の間持続点滴として身体に携帯型の薬の注入機をつけて生活する必要性がある。

一方、XELOXは病院での薬の点滴投与後、飲み薬を2週間飲む必要があるが、通院の頻度と注入機を携帯型の注入機をつけて生活する煩わしさを考え、

僕はXELOXを選択することにした。

とはいえ、この日はいきなり薬の投与はせず、一旦考える時間を与えられ、3日後の治療時にどちらにするか決めてくることになったのだった。

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