がんと向き合う方法:後編

その日の晩、早速戦う準備をはじめた。まずは従姉妹から紹介のあった本をKindleで購入し読み始める。友達の同級生の本らしい。改めてその本のタイトルを見ると、自分の中で戦う気持ちがふつふつ湧いて出てくるを感じた。

治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ

情報戦。従姉妹のメッセージに何度も登場した言葉だ。僕は一気に本を読み込んだ。

本の内容はここでは多くを語らないので興味があれば読んでもらいたいのだけど、僕はこの高山知朗さんの本を読んではじめて、患者自身でこの大病を治す努力をする方法があることに気づかされた。頭のどこかでがんなんて僕の力が及ばないものとばかり考えていたのだ。

自分自身で情報を集め考え判断することで、僕の生存率を高めることができるんだ。

なんといっても、本の中で著者が自分の情報収集と理性的な判断で2度のがんを克服しているのである。

がんに克つことができる。戦う決意が、力がみなぎる。

希望を胸に眠りについた僕は、次の日の朝から早速現実を直視し情報収集を始めた。

情報を集めるのはいいのだが、何から手をつけるべきか。僕は、本を読んで芽生えた1つの大きな疑問の答えを探すことから始めた。

その疑問とは、「この入院している病院が大腸がんの治療にあたりベストなのか?」だ。

まず、がんの治療は標準治療というものが定まっている。つまりがん治療の教科書みたいなものがあるらしい。だからどの病院でも一般に治療成績が良いと思われる治療を受けることができる。これは日本医療の素晴らしい面だ。

さらに、僕の入院していた病院は都内でも有名な病院のひとつだった。そして治療法に関しても元外科医の叔父が太鼓判を押している。

とはいえ、医療関連の本を読むうちにわかったのだが、各病院には得意分野があるのだ。これはもう絶対にあるのだから仕方ない。そして病院が大きくて有名だから他の病院より良い治療が受けられるというわけでは必ずしもないらしい。

”がんの部位”によってどこの病院の治療が優れている、という事実が存在するのである。

それはその病院にいる医師のスキルが優れているからかもしれないし、設備が最新だからかもしれないし、チーム医療がうまくいっているからかもしれない。

いろいろ理由はあるにせよ、僕の大腸がんを治療するのにできるだけベストな病院を選ばなければ、僕は絶対に後悔すると思った。

そしてこの場合、後悔した時にはリカバリーが効かないかもしれない。

では自分のがんに対してベストな病院をどう選べばいいのか?僕は年間の大腸がんの手術件数を元に考えることにした。手術件数は、多くの病院がHPで公表しているので各病院で比較しやすい。高山さんの本にも同じようなロジックの記載があったので参考にさせてもらった。

外科治療成績というのも同じく掲載している病院があるが、それは参考程度にした。もちろん大幅に治療成績が悪ければ問題なので見ておいた方がいい指標だ。

ただ、医療関連の記事やコラムを読んでいて感じたのだけど、何かしら治療が難しい状況に置かれた時、果敢に外科手術に挑戦する病院、手術は回避して他の方法を考える病院、と姿勢の違いがあるのではないかと僕は推測した。そしてそういった姿勢の違いが治療成績の数字に影響を与える可能性があると考えた。

端的に言えば、外科の治療成績が良いのは難しい手術を避けている可能性があるかもしれないということ。そして僕の場合、既に手術ができないと言われているので、果敢に外科手術に挑んでもらえる病院というのはウェルカムだった。

だから手術件数が多ければ良い、としたのだ。あと、手術件数が多い=毎日たくさんの大腸がんを見ている、と単純に考えてもなんだか経験値が豊富そうだ。

ちなみに、もちろんこの方法が最適な病院を選ぶ方法として全てではない。なぜなら腕が良く経験豊富な外科医がいる規模の小さな病院だってあるはずだ。その場合はどうしても手術件数は少なくなると思う。

だから、上記の考え方はあくまで経験値の高い病院を選ぶ確率を上げる方法、ということになる。

さて、僕は早速入院している病院の手術件数を調べてみた。すると僕の入院している病院は手術件数は、「普通」だった。少なくはない、けど他にもっと手術数の多い病院はある。治療法はこれで良いんだ、と思っていた僕の心は揺れた。

診断結果告知から3日後、僕は病院に手配してもらったCTなどの検査結果データを叔父に送る際、メールで自分の考えをぶつけた。叔父からは、入院している病院で大丈夫、そう返信がきた。

正直納得はできなかったけど、叔父が知り合いの画像診断師に僕の検査画像を見せる、ということになったので、とりあえずその人のフィードバックを待とうと思った。

そしてそのフィードバックによって僕のがん治療は新たな展開を見せることになるのだが、、、それはまた次回以降に書くことにする。

フィードバックを待つ間、病院選びの件はひとまず置いておいて、大腸がんや化学療法を含めた治療法に関して勉強をした。敵を知ることは大切なのである。

大腸がんの基本的な情報を理解するのに最も役立ったのは、「大腸がん (よくわかる最新医学)」という題名そのまんまの本である。

がん研有明病院の福長洋介医師が書いている本で、大腸がんの治療プロセスに関しての全てが網羅されている。それこそ病院選び、治療の種類、人工肛門の手入れ、術後の生活、お金の話、などなどがん患者や家族が抱える悩みのサポートをしてくれる本なのだ。おすすめである。

その他、おすすめの本やウェブサイトなどはコチラからどうぞ。

さて、ここまで僕ががんに恐れ慄いてから、がんに立ち向かいはじめるまで、だらだらと3つのチャプターにまたがり書いてきたのだけど(ちょっと長すぎたかな)、がんに立ち向かう方法を一言で言えば、キチンとした情報を収集して理解すれば希望が見える、ということなると思う。

医師や看護師さんから教わることは勿論あるけど、全てを手取り足取り教えてくれるわけではない。聞かないと話してくれないことだってある。質問するのにも知識は必要だ。だから自分で積極的に情報を取りにいって勉強をしたほうが絶対いいと思った。

僕自身、いまだにがんの情報を直視するのはすごく怖い。だけど怖い情報と同時に、いつもその時の自分の状況に合わせた希望というものも情報の中には存在している。だからめげない。

そして、情報を知ることによって、自分の力で状況をちょっとだけ動かすことができたと思うし、何より前向きになることができた。正直告知以前よりも気が楽になったのを実感していた。

ということで、この章の最後に当時の僕と同じような状況にある方に向けて、前述の本の中に恐怖心を和らげてくれた「事実」があったのでそれを紹介したい。

“大腸がんは転移しても切除が可能であれば治癒の可能性があります。”

“がん薬物療法によって転移した箇所が切除できるようになることを治療の「コンバージョン」といいます。いまや、すぐに切除を諦めないで、コンバージョンをめざす時代へと移りつつあるのが大腸がんの治療の新しい潮流といえるでしょう。”
引用元:大腸がん (よくわかる最新医学) P.66

ほら、希望が見えるでしょ。
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