2016年10月29日のお昼過ぎ。6畳程度の部屋に、12人はいただろうか。僕の家族・親族が8名程度、病院のスタッフが4名程度、互いの肩が触れ合わないくらいのギリギリの距離感は、重苦しい空気をさらに圧迫していた。
まさにこれから、ガンの告知というイベントが始まろうとしているのを、僕は知っている。
当事者の僕はその日は朝から恋人が買って来てくれたお守りを握りしめ、東京タワーの見える窓から、青くて少しだけ寂しさのある秋空に向かって祈っていた。最悪でもステージ3で留まっていてくれ、と。しかし、僕の祈りより少し悪い状況が主治医の口から発せられた。「ステージ3かステージ4と考えられます。ステージ3だったとしても癌の大きさから手術はできず、抗がん剤治療となります。」思わず、ふあああ、という声が漏れ出た。こうして33歳の秋、僕は大腸がんと向き合うことになったのだ。