大腸がんの手術の説明

手術日を次の月曜日に控えた金曜日の夜、主治医から検査の結果と手術の手順についての説明があったのだが、まずはこの時点での僕のがんの状態についておさらいをしておこう。

そもそも僕のがんは前のF病院でステージ3か4と言われていた。

腫瘍の場所は、上行結腸と横行結腸の間にありサイズは大きい。

その大きさゆえ、CTで見る限り腫瘍が十二指腸に触れている。なので、十二指腸に浸潤している可能性があった。

そして、腫瘍周りのリンパ節も2つ腫れていることから、リンパ節転移の疑いがある。

さらに、肺にも1-2つ極小の白い傷(影)が確認できていた。

そのため、ステージ3か4という見立てであった。

さて金曜日の夜、約束の時間を少しだけ過ぎた頃、O医師が病室に顔を出し、同じ入院病棟にある会議室へと案内してくれた。小さなデスクにパソコンが置いてあり、その周りに椅子が数個置いてある小さな空間である。参加者は当事者の僕、両親と次男の4名であった。

O医師はまず検査の結果を振り返って、言葉を選びながら僕のがんの現状を一緒に確認した。

やはり今までいくつの大腸がんを見てきたO医師から見ても僕の大腸がんは大きいらしかった。僕の母親はそれを聞き大きなため息を漏らす。

しかし、僕は動じなかった。がんは大きさではなく、浸潤の深さであるということを知っていたからである。

そして良いニュースがあった。T病院での検査の結果、O医師の見立てではステージ3aだろうとのこと。リンパ節の転移は2つあるが、彼の経験上肺の小さな白い影は悪性腫瘍でないと思うとのことであった。

恐らく前回F病院のCTの検査結果とこのT病院での検査結果を比較した際、白い影の成長が見られなかったということもあるのだと思う。

とにかく経験のある医師からステージ4ではない、と断言されたではあるが、僕の気落ちは少し複雑であった。なんとなく期待してはいけない気がしたのだ。がんになってからというもの、期待することに恐れをなしていたのだと思う。

そして彼は続けて、いくつかの書類を元に手術の手順を説明していく。今回の手術のキモはなんといっても、前F病院では手術不可と言われた十二指腸と大腸がんの浸潤部分の処置である。

まず手術は開腹手術で行うという。傷跡の少ない腹腔鏡の可能性を僅かながら追っていた希望は打ち砕かれる。腫瘍が大きいのだ。まあ、仕方がない。

手術術形式は「右半結腸切除術・十二指腸合併切除術(膵頭十二指腸切除術)」というらしい。

まず、右半結腸切除術だが、これは大腸の右側全部切り取りまっせ、というものである。つまり横行結腸の真ん中から虫垂にかけて全部切り取られる。

しかし僕はなぜか術後しばらく盲腸や虫垂はまだ残っていると勘違いしていたのであるが・・・。

そんなボケボケの状態であったので、十二指腸合併切除術に関しては更に記憶が曖昧である。なのでここで説明不足やとんちんかんなことが書いてがあってもそれは全て僕のせいでありO医師のせいではない。

とにかくここは手元にあるO医師の書いてくれた子供の落書きのような絵(失礼すぎる!)と僕の記憶を総動員して説明しよう。

十二指腸合併切除術は、大腸がんが浸潤している十二指腸の一部分を切り取り、切り取って開いた穴に小腸をつなげる手術である。

まず十二指腸の浸潤部分の表層を切り取る、すると十二指腸のチューブに丸い穴が開いた状態になる。

そして次に、小腸を二つに切る。十二指腸と繋がっていない片方Aの小腸を十二指腸の穴につなげる。もう片方Bは十二指腸にもともと繋がっているが小腸からは切り離された状態になっているのでもう片方Aの小腸の中腹へ接続し直す。

つまり、十二指腸から小腸へ消化物が流れるルートが2つできるということだ。(これをO医師が言っていたのは確実に覚えている。)

僕が思っていたよりはるかに人体というのはいじり放題なのだなあと感心した。

さらにO医師は、十二指腸のへがんの浸潤が想定よりも酷く少し切り取るくらいでは対応できない時の対策も説明してくれた。それがカッコ内の膵頭十二指腸切除術である。消化器外科で最も難しい手術の一つだと元外科医の叔父から聞いていたそれであった。

十二指腸を体から取り去る時は、膵臓の一部も一緒に取り除かないといけないらしい。なので膵臓がんの手術で行われる術式を行う必要性があるらしかった。少し緊張する話ではあったが、事前の胃カメラで十二指腸内部への浸潤は認められていなかったので、心配する必要はなさそうだった。

さて、O医師の話には特徴があった。手術の説明の時改めてそれを確認した。まず、患者に無用な心配はさせないこと、そして真実については断定的に話すこと、選択肢がある時はポジティブな選択肢を強調すること、の3点である。

患者に無用な心配をさせないという点で言えば、この手術の説明の際に腹膜播種の可能性については一切触れなかったということがある。前のF病院では指摘されていたポイントであったのだが、僕が質問するまで触れなかった。可能性としては考えられることでも彼の見立てに無いことは話さない、そういうスタンスであるらしい。

そして真実に関しては断定的に話すという点だが、腹膜播種があった場合はどうするのかという質問に対しては、手術を中断し化学療法に切り替える、と僕の顔を見て断定した。そこにいつもの患者思いの姿はない。

そして最後に、選択肢がある時はポジティブな選択肢を強調するというところだが、それはステージ3aを押した時に垣間見れた。「肺への転移はない、そう言い切ることはできないけど僕の経験上無いと思うからそこまで心配しなくていいよ。」というメッセージを彼の話の中からたびたび感じることができた。

期待を持つことに疲れた僕だったが、いまは彼の経験からくる考えを信じよう、そう思うようにした。
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